音楽の道しるべ omkyo

「音楽(ロック、ジャズ、ブルース中心)、どう聴けばいいかなあ」に自分なりに答えてみたブログです。

マイルス・デイヴィスがBitches Brewを生み出すまで

こんばんは。

マイルス・デイヴィスの記事です。

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画像:wikipedia より

 

Kind Of Blueなど、アコースティック・ジャズ(マイルス本人にむかって彼の音楽を「ジャズ」というとキレられます)の名盤を残したマイルスですが、その後には突然電子ピアノやエレクトリックギターと言った楽器を用いて、In A Slient Way やBitches Brewなどを作ります。

 

今回はマイルス・デイヴィスがエレクトリック楽器を導入したきっかけや、そこからどうやってBitches Brewに至ったのかを紹介していきます。

 

 

 

どうしてこうなったか?

 マイルスが音楽活動を始めてから考えていたのは、「その時代の最高にヒップな音楽がやりたい」ということでした。1950年代までは、まだビバップハードバップといったジャズが人気でしたが、1960年代になってくるとロックが主流となり、これが黒人・白人(当時は黒人差別がひどかった)ともに受け入れられるジャンルとなりました。

 

 ということで、マイルスはロックをはじめ、R&Bも含む「ヒップ」なサウンドを彼のスタイルに取り入れようとしました。ジミ・ヘンドリックスは彼が影響を受けたに違いないとされる人物です。ジミヘンは黒人であるにも関わらず、黒人・白人関係なく彼の音楽を受け入れていました。

 


www.youtube.com

 

 当然マイルスは「あいつも黒人なのに何故あんなにも(オレとは違い)白人にも人気があるのだろう」と考えます。そこで彼がいち早く気付いたのは、

 

  アンプを通すと、音が大きいので、ライヴ会場に音が伝わりやすい

        その結果、一度にたくさんの人が聴ける

 

 という事でした。

 

 また、ジミヘンが現れる前、マイルスはギターに興味がほとんどなく、興味を示したのはベニーグッドマンの楽団にいたチャーリー・クリスチャンのみでした。勿論マイルスのバンドにギタリストを加えたことはありませんでした。そこに、例の思い切り歪ませたサウンドでブルーステイストのロックをギターで演奏するスターが現れ、マイルスはギターに興味を持つようになります。マイルスのバンドにギターが入っているのもジミの影響といえます。

 

 「最高にヒップな音楽がやりたい」というマイルスの方針は、後にマイケル・ジャクソンのカヴァーやプリンスとの共演といった、R&Bとフユージョンを融合させ、さらにそれを「マイルスの音楽」として大成させることにつながっていきます。

 

 

Bitches Brewへの道のり

①Miles In The Sky

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 使用される楽器の変化として、ギタリストのジョージ・ベンソンが入ったこと、元からクインテットにいたハービー・ハンコックに電子ピアノを弾くようになったことが挙げられます。マイルスはエレクトリックピアノをベースとともにコード進行をはっきりさせる目的として使い、その結果、ソロが演奏しやすくなりました。

 

 アルバムの内容はまだ「エレクトリックなジャズ」といった感じですが、もうすでにロックとの融合は進んでいます。その証拠に、ドラムのビートがこれまでとは大きく異なっており、この後には、マイルスはより複雑なリズムを生み出すことになります。

 

②In A Silent Way

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 ”エレクトリック・マイルスのスタイルが完成した状態”だといえるのがこのアルバムです。

 

 この作品には、ハービー・ハンコックに加え、チック・コリアジョー・ザヴィヌルが加わり、まさかの電子ピアノ3人が参加しているという特徴があります。1人がコードを弾き、そのほかで曲を彩る、といった役割があり、ベースラインをはっきりさせつつもエレクトリックならではのカラーを出しています。これ以前のMiles In The Sky でも参加したウェイン・ショーター(黒の魔術師、と呼ぶ人がいるソプラノサックス奏者)がいるのも、独特な音楽になった要因といえるかもしれません。

 

③Bitches Brew

open.spotify.com

youtube musicにこのアルバムがありませんでした。ごめんなさい<(_ _)>

 

 In A Silent Way が発展した形がこのLPレコード二枚分のアルバムで、エレクトリック・マイルスの中でも最重要作品となっています。電子ピアノを担当するのがチック・コリア一人になった代わりに、今度はドラマー、ベーシストが二人ずつ参加しました(ベーシストは、1人はエレクトリック・ベース、1人はジャズお馴染みのウッド・ベース)。これはマイルスが、各々がリズムを叩いて感情を表現するという、アフリカの伝統的な音楽の手法をやってみたかったからです。

 

 なお、In A Silent WayとこのBitches Brewではギタリストのジョン・マクラフリンが参加しています。彼のギタープレイについてマイルスは「ジミヘン以上のエネルギーを感じた」と言っているほど、信頼できるもので、実際に聴いてみるとマイルスのサウンドの中でもかなり際立っています。

 

 

最後に

  いかがでしたか。最初に聴くと「なんじゃこりゃ!」となり衝撃を受けるであろうBitches Brewは、マイルスが最新のサウンドを導入してより”ヒップ”になりたいと考えたことで生まれたものでした。

 

 ではまた。Bitches Brewの録音のときスタジオ内では写真NGだったらしい。